アレルギー疾患
お子さんのアレルギー疾患についても当院で対応させて頂きます。
主なアレルギー疾患は下記をご覧ください。
アトピー性皮膚炎
定義:増悪・寛解を繰り返す掻痒のある湿疹を主病とする病態であり、患者の多くはアトピー素因をも知ます。
アトピー素因とは・・・家族歴、既往歴(気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎のうちのいずれか、あるいは複数の疾患)。IgE抗体を産生しやすい
診断基準:以下の1〜3を満たすもの
- 掻痒
- 特徴的皮疹と分布
- 慢性・反復性経過:乳児では2か月以上、その他では6か月以上
治療:基本はスキンケア(洗浄+保湿)、抗炎症薬外用(ステロイド塗布薬)です。
リアクティブ療法
湿疹がある時は抗炎症薬外用(ステロイド塗布薬)を用い、湿疹が認められない時には保湿剤のみで対応します。ステロイド塗布を中止すると湿疹が悪化する場合には、プロアクティブ療法へ切り替えます。
プロアクティブ療法
ステロイド外用薬をしっかり使用し、きれいな肌の状態を維持します。
①見た目に湿疹がきれいになっても、湿疹があった場所は、1週間はステロイド外用薬を継続します。
②悪化がなければ、湿疹があった場所へのステロイド外用薬を2日に1回、1週間継続します。
③悪化がなければ、湿疹があった場所へのステロイド外用薬を3日に1回、1週間継続します。
④悪化がなければ、湿疹があった場所へのステロイド外用薬を7日に1回、1週間継続します。
湿疹が悪化した場合には、①へ戻ってきれいな肌を維持します。
食物アレルギー
分類
- 新生児乳児消化管アレルギー
- 食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎
- 即時型症状(蕁麻疹・アナフィラキシーなど)
- 特殊型(食物依存性運動誘発アレルギー・口腔アレルギー症候群)
診断
- 血液検査(特異的IgE抗体検査)
- 食物経口負荷試験
治療
過剰な食物除去はせず、適切な摂取を進めます
ただし、少量でもアナフィラキシー症状(後述)が出現した場合には、安全のために食物除去を行います
消化管アレルギー(食物蛋白誘発胃腸炎)
食物アレルギーのうち主に消化器症状(嘔吐、下痢、血便など)を認める疾患です。
新生児期発症
原因食材 ミルク
症状 消化器症状(嘔吐、下痢、血便)、体重増加不良、発熱など
治療 普通ミルクを中止し、母乳メインもしくはアレルギー用ミルクへ変更
アレルギー用ミルク(加水分解乳・アミノ酸乳)は味を嫌がることがあります。
離乳食開始後
原因食材 米、卵、大豆、小麦
症状 嘔吐、慢性下痢、体重増加不良など。血便の症状は少ない
治療 通常の食物アレルギー(即時型)とは対応が異なり、消化管アレルギーでは自然に治るまで除去します。
即時型食物アレルギーでは必要最小限の除去にとどめ可能な範囲で摂取を進めます。
じんましん
定義:膨疹、すなわち紅斑を伴う一過性、限局性の浮腫が病的に出現する疾患であり、多くは痒みを伴います。通常の蕁麻疹に合併して、あるいは単独に皮膚ないし粘膜の深部を中心とした限局性浮腫は、特に血管性浮腫と呼びます。蕁麻疹は、原因あり(刺激誘発型)と原因なし(特発性)に分類されます。
原因:7-8割は原因が不明の特発性です。原因がわかるものとして代表的なものは食物アレルギーや薬剤などがありますが、頻度は少ないです。また、一つの要因だけではなく、疲れ、ストレス、日光、運動といった要因が複合的に重なることで症状が出ます。
治療:第二世代抗ヒスタミン薬の内服が第一選択
アナフィラキシー
定義:複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され、生命に危機を与えうる過敏反応。
①アレルゲン暴露がない状況(皮膚・粘膜症状に加えて、A or/and Bがあるもの)
皮膚・粘膜症状(全身の発疹、掻痒、紅潮、浮腫)
A. 呼吸器症状(呼吸困難、気道狭窄、喘鳴、低酸素血症)
B. 循環器症状(血圧低下、意識障害)
②アレルゲン暴露がある状況(A〜Dいずれか2つ以上症状があるもの)
A. 皮膚・粘膜症状(全身の発疹、掻痒、紅潮、浮腫)
B. 呼吸器症状(呼吸困難、気道狭窄、喘鳴、低酸素血症)
C. 循環器症状(血圧低下、意識障害)
D. 持続する消化器症状(腹痛、嘔気嘔吐)
治療:重症度を判定しアドレナリン(エピペン)を使用するかどうか判断します(※)
- 原因の除去を行います
- モニター装着、救急蘇生の評価を行います
- 酸素投与を行います
アドレナリン(エピペン)投与が必要な場合
- 重篤なアナフィラキシーの既往
- 症状進行が速い
- 循環器症状、神経症状がある
- 呼吸器症状があり吸入の効果が不十分
*アドレナリンの効果は10-15分で消失するため、症状が再燃する場合には再投与が必要です。
*アナフィラキシーを起こした患者さんの4.6%に二相性反応(症状が落ち着いてから再発)が生じます。
原因の評価、再発防止の指導および症状出現時の対応に関する指導が重要です。
※当院ではエピペン処方が可能です
詳しくはこちら・・・アナフィラキシーってなあに.jp
気管支喘息
定義:喘息は、気道の慢性炎症を特徴とし、発作性に起こる気道狭窄によって、喘鳴や咳嗽、呼気延長、呼吸困難を繰り返す疾患です。気道狭窄は、気管支平滑筋収縮、気道粘膜浮腫、気道分泌物亢進を主な成因とします。夜間、明け方に症状悪化することが多いです。
目標:長期管理のコントロール目標は軽微な症状もない完璧なコントロールを目指します
1) 症状のコントロール
昼夜を通じて喘息症状がない
β刺激薬の使用頻度が減少、もしくは必要がない
2) 呼吸機能の正常化
気道過敏性が改善し、運動や冷気による症状誘発がない
ピークフローやスパイロメトリーがほぼ正常で安定している
3) QOL(生活の質)の改善
スポーツも含めて日常生活を普通に行うことができる
治療薬による副作用がない
治療:急性増悪(発作時)と長期管理(発作予防)の二本立てで治療を行います
喘息指導(患者さん教育)
1) 急性増悪予防(発作予防)を基盤とした治療目標と治療姿勢
軽症持続型の患者さんの多くは症状がないときは治療の必要性がないと考えがちですが、なぜ症状がないときにも薬剤を継続しなくてはならないかの理解を得て治療目標を共有します。
2) 病態生理の説明
喘息は慢性疾患であり、症状のないときにも気道に慢性炎症があるために気道が過敏になって刺激などで症状が生じるため、急性増悪(発作)の症状がある時にだけ治療をしても根本的な治療にはなりません。気道過敏性が亢進して喘息死のリスクが高まることを防ぐため、症状がないときにも予防的な治療を継続することが重要です。
3) 治療目標の共有
最終的な治療目標(健康なお子さんと同じ活動を行なっても喘息症状が出現せず、日常生活に支障がなくなること)の実現に向けて、どのようなステップで治療を進めていくかを患者さん
及び家族とよく話し合い、治療目標を共有し治療内容を決定していきます。
- 重症度評価/長期管理薬決定
小児喘息の重症度は、間欠型、軽症持続型、中等症持続型、重症持続型に区分されます。 - 環境指導(吸入アレルゲンや受動喫煙の回避)
吸入アレルゲンに感作を認め、気道の吸入アレルゲンへの曝露が気道の慢性炎症の誘導に関わっていると考えられています。このため、気道の吸入アレルゲンへの曝露は発症・増悪の双方に重要な因子となります。吸入アレルゲンの多くは室内アレルゲンであり、ダニやゴキブリなどの節足動物、ネコ、イヌなどの哺乳動物の毛、カビなどがあります。屋外で暴露する吸入アレルゲンとしては、花粉(スギ・ヒノキ・カモガヤ・ブタクサ・ヨモギ)、カビなどがあります。タバコの煙への曝露は、喘息の増悪因子であると同時に発症に関わる因子となります。 - 吸入指導
ステロイド吸入・・・気道の炎症を抑えます
β2刺激薬吸入・・・気管支を拡張して喘息発作症状を軽減します - 内服指導
ロイコトリエン受容体拮抗薬(プランルカスト・モンテルカスト)
ステロイド内服薬(プレドニゾロン・デキタメタゾン・ベタメタゾン)
アレルギー性鼻炎
定義:発作性反復性のくしゃみ、鼻漏(水様性)、鼻閉を3主徴とします。鼻炎は、感染性、過敏性非感染性、刺激性、その他に大別されます。アレルギー性鼻炎は発症時期によって通年性アレルギー性鼻炎と季節性アレルギー性鼻炎に分けられます。
治療方法
①コミュニケーション
医師と患者さんが一緒に治療プログラムを作り、治療経過も共同で検討します。患者さんの治療への意欲や病気や治療法への理解などを通じて互いの信頼関係を促進させ、診療における良きパートナーとなります。
②抗原除去と回避
アレルギー性鼻炎はⅠ型アレルギーであり、基本的には抗原の暴露がなければ発症しません。抗原の除去・回避は治療の第一歩であり、患者さんのみにできることです。自発的な環境整備がなければ、薬物療法のみでアレルギー性鼻炎をコントロールすることは難しいです。病気・治療への理解を深め、患者さん自身が治療に参加している意義を実感してもらいます。
ダニの除去:清掃、除湿、防ダニフトンカバーの使用
花粉の回避:マスク、メガネの着用など
③薬物療法
抗ヒスタミン薬
ロイコトリエン拮抗薬
ステロイド薬(鼻噴霧用、経口)
④アレルゲン免疫療法(皮下・舌下)(※)
病因アレルゲンを投与していくことで、アレルゲンの曝露により引き起こされる症状を緩和する治療法です。薬物に頼らない長期寛解を望む症例や薬物療法が無効である症例、あるいは眠気などの副作用で薬物療法の継続が難しい症例には選択肢となります。特に治療終了後にも効果が持続する点や喘息など他のアレルギー疾患の新規発症を予防する点など、一般的な薬物療法では得られないメリット、アレルギーの自然経過に対する修飾作用があります。
- スギ花粉舌下免疫療法
- ダニ抗原舌下免疫療法
⑤手術療法
鼻粘膜変性手術
下鼻甲介粘膜をレーザー焼灼などで変性させることで症状の発現を抑制する手術
鼻腔形態改善手術
不可逆的に形態変化した粘膜や骨・軟骨を切除することで鼻閉改善を目的とした手術
鼻漏改善手術
後鼻神経など鼻漏分泌神経を切断することにより鼻漏の抑制を目的とした手術
※当院ではシダキュア・ミティキュア処方(舌下免疫療法)が可能です
詳しくはこちら・・・トリーさんのアレルゲン免疫療法ナビ